Manga × Culture Vol.1 近藤聡乃
少女、虫、体、血、分身......。近藤聡乃
さんの絵の中には、まだ大人になりきれていない少女の中にある残酷性や性への興味、思春期特有の高い自意識が感じられる。鉛筆で非常に細かく描かれた1枚1枚の絵は、一瞬ぞわっと鳥肌が立ってしまうが、怖い怖いと思いながらもなぜかもう一度見たくなる。見てはいけない人の暗部をのぞき見てしまったような背徳感と、この「ぞわっ」がもう一度味わいたくて、ついつい見る。近藤さんのことは漫画『はこにわ虫』で知ったのだが、ギャラリーに所属しドローイングやペインティングはもちろん、アニメーションの制作もしているという。この度開催された、個展「KiyaKiya」で近藤さんにインタビューを敢行した。
「KiyaKiya」 2010-2011
シングルチャンネル・アニメーションビデオ 6min. 39sec.
シングルチャンネル・アニメーションビデオ 6min. 39sec.
今回の展覧会「KiyaKiya」ですが、タイトルの言葉は何なのでしょう?
近藤聡乃(以下、近藤) 古い日本語で、「胸がきやきやする」という言葉からとっています。いままでこの言葉を知ってる人に出会った事はありません(笑)。この言葉を知ったのは、澁澤龍彦の『少女コレクション序説』という短編の中の用語集で、なにか気掛かりなような、不安なような、でも懐かしい、ちょうどデジャヴュのあとに体験する感覚、そんな感じを胸がきやきやするという。
自分の中でも、そういえばあのような気持ちを表現する言葉ってないよなと思っていたので、すっと腑に落ちたんです。また、それと同時に紙芝居に興味があって。「胸がきやきやする」というキーワードと紙芝居ということを軸に作品が作れないかと思って考えたのが今回の展示です。
映像の中に出てくる、文字のような記号のような言葉が印象的でした。あれは何ですか?
近藤 アニメーションのなかで女の子が紙芝居を読んでいるので、文字が必要だったんです。でも、日本語でも英語でもそうなんですが、何か文字を使ってしまうと、そのイメージが強すぎるような気がしたんです。だから見ている人全員にとって、文字とは認識できるけれど、誰も読めないという文字が必要だったんです。ひらがなの五十音とアルファベットの4文字で全部で54文字を作って、それをパーツに組み換えて表示しています。だから私は読めるんですが、具体的な意味はありません。
近藤さんがこれまでに発表されてきた『はこにわ虫』(青林工藝舎)等の漫画の世界から、登場する女の子は同じですが、表現がだいぶ変わってきていますね。漫画の方では、人の体の中から湧き出てくるドロドロとしたものや、残酷性が垣間見えますが、今回のアニメーションを見ると、肉体からは解放されて、神話のようになっている。そんな感じがしました。
近藤 そうですね。漫画を描いた時からはかなり年数も経ているので、意図して変わったというよりは、自然に変わってきているのだと思います。また、漫画は一応ストーリーがあるので、そこまで唐突な展開にはできないんですが、アニメーションの場合は、音楽等の要素も入ってくるので抽象度を高くても結構見ていられる。それはけっこう分けて描いています。
近藤聡乃(以下、近藤) 古い日本語で、「胸がきやきやする」という言葉からとっています。いままでこの言葉を知ってる人に出会った事はありません(笑)。この言葉を知ったのは、澁澤龍彦の『少女コレクション序説』という短編の中の用語集で、なにか気掛かりなような、不安なような、でも懐かしい、ちょうどデジャヴュのあとに体験する感覚、そんな感じを胸がきやきやするという。
自分の中でも、そういえばあのような気持ちを表現する言葉ってないよなと思っていたので、すっと腑に落ちたんです。また、それと同時に紙芝居に興味があって。「胸がきやきやする」というキーワードと紙芝居ということを軸に作品が作れないかと思って考えたのが今回の展示です。
映像の中に出てくる、文字のような記号のような言葉が印象的でした。あれは何ですか?
近藤 アニメーションのなかで女の子が紙芝居を読んでいるので、文字が必要だったんです。でも、日本語でも英語でもそうなんですが、何か文字を使ってしまうと、そのイメージが強すぎるような気がしたんです。だから見ている人全員にとって、文字とは認識できるけれど、誰も読めないという文字が必要だったんです。ひらがなの五十音とアルファベットの4文字で全部で54文字を作って、それをパーツに組み換えて表示しています。だから私は読めるんですが、具体的な意味はありません。
近藤さんがこれまでに発表されてきた『はこにわ虫』(青林工藝舎)等の漫画の世界から、登場する女の子は同じですが、表現がだいぶ変わってきていますね。漫画の方では、人の体の中から湧き出てくるドロドロとしたものや、残酷性が垣間見えますが、今回のアニメーションを見ると、肉体からは解放されて、神話のようになっている。そんな感じがしました。
近藤 そうですね。漫画を描いた時からはかなり年数も経ているので、意図して変わったというよりは、自然に変わってきているのだと思います。また、漫画は一応ストーリーがあるので、そこまで唐突な展開にはできないんですが、アニメーションの場合は、音楽等の要素も入ってくるので抽象度を高くても結構見ていられる。それはけっこう分けて描いています。
「KiyaKiya_painting01」 2009
22.8 x 30.3cm キャンバスに油彩 撮影:齋木克裕
22.8 x 30.3cm キャンバスに油彩 撮影:齋木克裕
近藤さんが漫画を自分の表現としてやろうと思ったのはいつ頃ですか?
近藤 高校三年生の時です。美術の予備校に通っていまして、夏にコンペがあったんですね。その時に人生で初めて漫画を描いてみたら優勝したんです(笑)。うれしくなって、コピーでいっぱい作って売ったりして。それが本当に楽しい思い出としてあったので、大学生になったら漫画家になろうと思っていました。その後、多摩美のグラフィックデザイン科に進学して、課題の合間に漫画を描いて、大学一年の時に描いた作品で2年の頭くらいに雑誌でデビューしました。初めて雑誌に載ったのは『アックス』で、初めての連載はロッキングオンの「コミックH」です。
近藤さんの漫画の中に登場する世界、澁澤龍彦のような少女観だったり、高野文子の漫画にあるような少し達観した世の中の見方みたいなものは、どこからやってくるのでしょう?
近藤 漫画を読み始めたのが遅くて、中学生くらいの時に初めて手塚治虫の漫画を手にとった、というくらいで。少女漫画にはほとんど触れた事がないんです。ひとつあるとすれば、たまというバンドがすごく好きで、10代の時に熱中したことと言えばたまの音楽を聴くことくらい。そこから、自然にガロの存在を知ったり、書店で見たという感じですね。
絵のタッチとかで影響を受けた方はいますか? 近藤さんの絵は少女画のようでそうではない、そんな印象を受けましたが。
近藤 佐伯俊男さんという漫画家さんの絵がすごく好きで、真似をして描いたりしたこともあったので、最初の頃の絵はすごく似ていますね。とはいえ、彼の絵に近づきたくてたくさん練習したという程ではないんですが(笑)。
近藤 高校三年生の時です。美術の予備校に通っていまして、夏にコンペがあったんですね。その時に人生で初めて漫画を描いてみたら優勝したんです(笑)。うれしくなって、コピーでいっぱい作って売ったりして。それが本当に楽しい思い出としてあったので、大学生になったら漫画家になろうと思っていました。その後、多摩美のグラフィックデザイン科に進学して、課題の合間に漫画を描いて、大学一年の時に描いた作品で2年の頭くらいに雑誌でデビューしました。初めて雑誌に載ったのは『アックス』で、初めての連載はロッキングオンの「コミックH」です。
近藤さんの漫画の中に登場する世界、澁澤龍彦のような少女観だったり、高野文子の漫画にあるような少し達観した世の中の見方みたいなものは、どこからやってくるのでしょう?
近藤 漫画を読み始めたのが遅くて、中学生くらいの時に初めて手塚治虫の漫画を手にとった、というくらいで。少女漫画にはほとんど触れた事がないんです。ひとつあるとすれば、たまというバンドがすごく好きで、10代の時に熱中したことと言えばたまの音楽を聴くことくらい。そこから、自然にガロの存在を知ったり、書店で見たという感じですね。
絵のタッチとかで影響を受けた方はいますか? 近藤さんの絵は少女画のようでそうではない、そんな印象を受けましたが。
近藤 佐伯俊男さんという漫画家さんの絵がすごく好きで、真似をして描いたりしたこともあったので、最初の頃の絵はすごく似ていますね。とはいえ、彼の絵に近づきたくてたくさん練習したという程ではないんですが(笑)。
近藤聡乃展「KiyaKiya」会場風景/ミヅマアートギャラリー(東京,2011)
撮影:宮島径, Courtesy the artist and Mizuma Art Gallery
撮影:宮島径, Courtesy the artist and Mizuma Art Gallery
ストーリーの作り方について教えてください。あと、近藤さんの作品で頻繁に登場するプクッとした女の子は誰なんでしょう?
近藤 漫画の場合は、まずは文章を書いてみて、それを線で区切ってページ数を決めて、さらに区切ってコマ割りをしてという流れですね。女の子は、一番最初に描いた漫画の主人公のクラスメイトの女の子なんです。よく自分のことかと聞かれますが、そうではなくて、憧れの女の子とか理想の自分という方が近いように思います。
近藤さんの漫画やアニメーションの中で、さまざまテーマはあると思いますが、一環して伝えたいことというのは何ですか?
近藤 その時々に興味があることをやっていく感じなんですが。「覚え間違い」とか「勘違い」であるとか「記憶のズレ」みたいなところに興味がありますね。
現在、近藤さんはNYにお住まいですが、移り住んでから自分の中で変わった事などはありますか?
近藤 具体的にはわかりません(笑)。たぶん、10年くらい住んでいたら感じることかもしれませんね。ひとつ思ったのは、今回読めない文字がたくさん出てきますよね、それは、知らない国で知らない言葉に囲まれる恐ろしさなのかもしれない。作った後にそう思いました。
近藤聡乃 展「KiyaKiya」
会期:2011年10月11日(火)〜11月12日(土)
会場:ミヅマアートギャラリー
http://mizuma-art.co.jp/exhibition/1314109331.php
近藤 聡乃
2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。
http://akinokondoh.com/index.html/
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近藤 漫画の場合は、まずは文章を書いてみて、それを線で区切ってページ数を決めて、さらに区切ってコマ割りをしてという流れですね。女の子は、一番最初に描いた漫画の主人公のクラスメイトの女の子なんです。よく自分のことかと聞かれますが、そうではなくて、憧れの女の子とか理想の自分という方が近いように思います。
近藤さんの漫画やアニメーションの中で、さまざまテーマはあると思いますが、一環して伝えたいことというのは何ですか?
近藤 その時々に興味があることをやっていく感じなんですが。「覚え間違い」とか「勘違い」であるとか「記憶のズレ」みたいなところに興味がありますね。
現在、近藤さんはNYにお住まいですが、移り住んでから自分の中で変わった事などはありますか?
近藤 具体的にはわかりません(笑)。たぶん、10年くらい住んでいたら感じることかもしれませんね。ひとつ思ったのは、今回読めない文字がたくさん出てきますよね、それは、知らない国で知らない言葉に囲まれる恐ろしさなのかもしれない。作った後にそう思いました。
近藤聡乃 展「KiyaKiya」
会期:2011年10月11日(火)〜11月12日(土)
会場:ミヅマアートギャラリー
http://mizuma-art.co.jp/exhibition/1314109331.php
Text_Keiko Kamijo
近藤 聡乃
2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。
http://akinokondoh.com/index.html/
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