Music×Graphics Vol.3 河野未彩インタビュー
「TIME・LOGIC」
音楽とジャケットデザインの蜜月を探るMusic×Graphicsの第3弾。デ・デ・マウスやイルリメ、エヴィスビーツ、そしてエンドリケリー☆エンドリケリーまで、ジャケットデザインのみならず、PVやライヴ映像なども手がけ、さらにはいち早くiPhoneアプリでデジタル作品集をリリースするなど、デジタル世代を生き抜いている河野未彩のインタビュー。名前の通り、色彩豊かに生み出す音楽デザインの素とは?アトリエを構える湘南で、海と夕日を眺めながら応えてくれた。
音楽にふれた原点は何でしたか?
父親の影響で、中学時代はビートルズばかり聴いていました。『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』とか、中期のサイケデリックものが主に好きでしたね。もう鼻血が出ちゃうくらい好き(笑)。オンタイムの音楽は聴いていませんでした。音楽と、デザインや映像が、時代のカルチャーを作っているのが面白くて60年代ものに興味を持ちました。
高校から大学へは、どんな音楽を聴いて育ったんですか?
高校時代はダンスをやっていて、ヒップホップやテクノを聴き始めました。そこからいわゆるクラブミュージックを聴くようになって、大学卒業後は週2回ペースでクラブに行くこともありましたね。匿名性の高い音楽が聴きたかったんです。そこで音楽を作っている人たちとも知り合って、そういうつながりが元でジャケット制作などを始めました。
現場主義なんですね。
はい。作品を作ろうとするときに、クラブで考えると思いつくんです。音楽のパワーを得て、考えるという作業が多いですね。質感とか世界観とか、抽象的なことですけど。音から絵を得るということは、自分のなかではごく自然なことだと思っていました。
音楽を聴きながら考えるというのは、どういう感覚なんですか?
音と絵は同じだと思います。あえていうなら、ベースが背景の色で、ハイハットがコラージュされている点々で、メロディはデッサン力とか、何かつながる部分があるんですよ。それを自分のなかで解釈してからアウトプットします。ただそんなにカッチリではなく、頭を自由にしてぼんやりと考えます。
ジャケット制作の依頼がきたら、やはりそのアーティストを聴き込むんですか?
とにかく聴きまくります。500回くらい聴いちゃうときもありますね。自分がピンときて動くまでは、ひたすら聴くしかなくて...。
何かが降りてくるのを待つタイプですね。
そうですね。自分待ちが多いです(笑)。あとは、絵のなかのモチーフがひとつだけできていて、その周りをどう固めていくかというときもあるし、ひたすらグチャグチャいじってできるときもあるし、いろいろです。
(BING『Discoteca Mahamid』)
河野さんの絵は要素が多いですが、完成図は見えているんですか? それとも積み上げて構成するんですか?
大体は見えています。でも、抽象的で実際に絵にはなっていないから、それを具体化していったものを積み重ねて、元の感覚に近づける作業です。
レトロな質感に、宇宙っぽかったり未来感のあるモチーフが同居している作風が多いと思いますが、好きなものを投げ込んだ感じですか?
昔の人が未来をイメージしたグラフィックが大好きなんです。ちょっとうさんくさい、作り物の未来。P-FUNKとか、サン・ラーとかの影響もあると思います。
ビートルズのジャケットからの影響はあると思いますか?
直接的にはないと思いますが、「サイケデリックな色使いだね」とはよくいわれます。派手な色使いは中期ビートルズからの影響かもしれませんね。ただ、日本のサイケデリックみたいなものがあるとしたら、それは継承していきたいと思っています。
ビートルズやP-FUNK以外に、影響をうけたアーティストのジャケットはありますか?
ピンクフロイドとかを手がけていたヒプノシスは好きでした。ただ、影響を受けたものを意識してしまうと真似になってしまいそうなので、逆に遠ざける傾向があります。

「V/N/C/S/P・C」(スタジオボイス 2009年02月号)
やはり60年代後半から70年代にかけてのカルチャーが好きなんですね。さて、音楽関連以外にも、グラフィックデザインはたくさんありますが、やはり音楽グラフィックは河野さんのなかで特別なものですか?
確かに音楽仕事には、「この音楽があってこそ、このデザインが生まれてきた」みたいな感覚はあります。他の仕事でも同じはずなんですが、特に音楽グラフィックにはその感覚を強く感じるんです。
確かに多くのグラフィックデザイナーは、CDジャケット仕事をやりたがりますよね。決してギャランティが良いとは思えませんが(笑)。
私は、"音楽に付随しているアートの重要性"にやられて、この仕事をやっているので、そこがポイントですかね。見たことのないものを作って喜ばせる、みたいなことが、CDジャケットではやりやすいのかもしれない。そこで興味を持たせて音楽を聴いてもらうことになれば、良い仕事をしたと思えます。
ところで、プロダクトとしてのCDが少なくなってきていますが、もし、配信専用画像データのみのジャケット制作の仕事がきたらどうしますか?
やったことありますよ。ぜんぜん問題ないです。やることは同じなので。むしろデータの方が彩度が出ていいかな(笑)。
ただし、音楽自体の売り上げが減少しているということは、CDジャケットデザインの仕事は少なくなる可能性が高いです。
まったく危機感も何も感じていないのが正直なところです(笑)。だけど、逆に自分の画集に音楽をつけてもらうとか、今まで音楽に対してやっていたことを自分の絵に対してやってもらうということも、一度やってみたいです。
確かに、いち早くデジタル作品集をリリースしていましたが、新しい可能性への動きは早いですよね。
自分の世代で、このタイミングでデジタル作品集を出したことは意味があったと思います。実は、平面の画集を出すにも絵が足りなくて、映像集をDVDで出すにもちょっと足りなくて。そこにちょうどiPhoneアプリという文明がやってきたので、これはいいタイミングだと思いました。

「河野未彩 デジタル作品集」
今後の活動で考えていることがあったら教えてください。
これからは写真を使ったジャケットも選択肢として増やしていきたいです。こういう写真を使うと決めてから、撮影のディレクションもしてみたい。
以前に、パーティ写真のブログも公開していましたが、写真は何故撮っていたんですか?
パーティに行くと、どうしても創作意欲が湧いちゃうんです。しかも週2で行っていたので。だから簡単な方法として写真に落とし込んでいました。現場感も伝わりやすいですしね。
結局、何故、音楽を聴いていると創作意欲が湧くんですかね?
やはり音楽って、先に進んでいるからじゃないですかね。時間の流れに音を当てはめて、次から次へと展開していくから、すごくポジティブな行為だと思うんです。そうすると、自分も何かを生み出したい!みたいな気持ちになるのかな。
Interview & Text_Tomohiro Okusa
河野未彩
1982年横浜生まれ。2006年多摩美術大学プロダクトデザイン専攻卒業の後フリーランスとして活動中。
堂本剛やDE DE MOUSE等のアートディレクション、デザインをはじめ、ポップや音楽/時代へのレスポンスとして、グラフィック/プロダクト/映像/写真など様々な分野でイメージを広げる。
2010年5月、初の単独作品集である「河野未彩 デジタル作品集」をiPhoneアプリでリリース。
http://md-k.net/
【A SELECTION OF WORK】
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