Planted Revolution Vol.1 東 信インタビュー

「芸術の使命は、自然を模倣することではなくて、自然を表現することである。」これは文豪バルザックの言葉。「Planted Revolution」では、花や樹木、植物などをモチーフや素材として用いているアーティストに、それぞれの自然観から作品作りについて語っていただく。第1弾は、「花の可能性を追究する」アーティスト・東 信。花屋を営み、毎日花と接することから生まれてきた作品の数々は、強いメッセージを私たちに問いかける。8月7日~15日まで行なわれた「Frozen Flowers」展の作品を見ながら、東が語った花とは?自然とは?

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ものすごい展示ですね。あれは、花がどうなっている状態なんですか?

冷凍庫の中で花を凍らせました。瞬間冷却するという方法もありますが、それだと普通のプリザーブドフラワーのように色鮮やかでキレイなんですが、なんか違う。「Frozen Flower」では、一気に凍らせるのではなく、アレンジした花を冷凍庫に入れて霧吹きをかけ続けるんです。瞬間冷却ではないから、徐々に花を殺していくような形になります。

枯れて花が朽ちていくところを氷で封じ込めているようなイメージですか。だからあんなに美しい色になるんですね。

濃くてきれいな色ですよね。普通、花が枯れていく時に色は変化していきますがここまで濃い色にはなりません。花が朽ち果てた状態でも同様です。花は変わることなく死に向かっていくのですが、そのベクトルを「凍らせる」という行為で少し変化させているのです。すると、枯れて朽ちていく花の美しさとは、また全然違った「美」を見せてくれたんです。

作るのにどれくらい時間がかかりましたか?

凍らせてからだいたい1週間くらいかな。1日4回霜取があるんだけど、その間にずっと霧吹きをし続ける。地道な作業です(笑)。でも、その分花と一緒にいる時間が長かったので、真っ正面から花と向き合えた作品でもあります。あのどろーっとして重たい感じがいいでしょう?

そうですね。熟して腐る寸前のなんとも言えない美しさがあると思います。

花屋を始めてから、毎日毎日自分は花を殺しているんです。ハサミで切って、ワイヤーで縛って、ヒモでぐるぐる巻きにして。そうやって花を殺し続けてきているからこそ、自分がかかわった花にいちばん美しい状態まで可能性を広げて死んでいってもらいたいと願う。自分が尊敬するアーティストに中川幸夫さんという方がいるのですが、今回花とこういう形でかかわったことで、中川幸夫先生はこういう風に花を見ていたのかなと感じることができたような気がします。以前に、花屋で出た大量の植物のゴミを置いて、そのまま腐らせていくというインスタレーションをしたことがあるのですが。その時に感じた美しさに少し似ています。死に向かっていく生の美しさというか。

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自然に対する考え方を聞かせてください。

花は自然のものだけど、花を使ってアート作品を作るということは、さっきも言ったけど花を殺してその命をもらい受けること。少なくとも、自分はそういう自覚をもって作品を作っています。自分という人間も自然の一部として、自然に触れて自然に介入していくことで、花や植物という自然の世界を感じる。種から生まれて朽ちていくまでの、植物のすべての「生」を見届ける。単に花が咲いている時だけを切り取って楽しむだけではなく、すべての瞬間で植物は美しさを見せてくれるんです。そうした「美」の瞬間を、自分が切り取って提示することで、自分の作品に触れた人たちがこれまでと違う見方で花や自然に接してくれたり、関心が高まればいいと思う。

東さんは花屋からスタートされて、2005年から本格的にアートの世界で展示活動に入り、パリのコレットのディスプレイで大きく注目されました。その後はギャラリーや美術館では展示できないような実験的な作品を展示するために「AMPG(Azuna Makoto Private Garelly)」を2年間という期間限定で立ち上げ、毎月新作を発表するというような非常にアグレッシブな試みをしてきました。
「花」を旧態依然とした華道の世界ではなく、フラワーアレンジメントの世界でもなく「アート」の世界で表現するという指標をかかげて5年間突っ走ってきたなという印象があるんですが、現在はどんな心境ですか?

今は、ばらまき続けた種が少しずつ伸びてきたのを必死に収穫しているという感じでしょうか。東京の下町にプライベートギャラリーを立ち上げた時には、とにかく作品を作り続けて毎月新しい実験を行うということしか考えていなかったので、その影響がどこまで広がるかは、正直未知数だと思っていました。でも、その時に展示していた作品を見て、国内はもちろんですが、海外の美術館やギャラリーから声をかけてもらったりして。いまは、世界各地で自分の作品を見てもらうことで、これまでいい意味でも悪い意味でも実験的に作ってきた作品の一つひとつをもう一度見つめ直し、コンセプトを反芻することができるのだと思います。

今年は11月にベルギーハッセルトのアートセンター「Z33」で大規模な展示が決まっています。これまでの自分の作品を見てもらえるような展示になると思いますが、場所を変えて展示することでまた新たな反応が得られたらと思います。

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Text & Photos_Keiko Kamijo

 


東 信
1976年福岡県生まれ。2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりNYの個展を皮切りに海外へも活動の幅を広げ、パリのコレットなどでディスプレイを行い話題となる。
主な展覧会に、2006年パリ・カルティエ現代美術財団「Kehai(気配)」、2008年ドイツNRWフォーラム「BOTANICA(x)」、東京21_21designsight「セカンドネイチャー」、2009年「TOKYO FIBER09 SENSEWARE」等。2010年11月20日~2011年3月13日まで、ベルギーのアートセンター"Z33"にて「Alter Nature」に出展予定。http://www.azumamakoto.com/

 

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