Planted Revolution Vol.3 山田愛子インタビュー
「芸術の使命は、自然を模倣することではなくて、自然を表現することである。」これは文豪バルザックの言葉。「Planted Revolution」では、花や樹木、植物などをモチーフや素材として用いているアーティストに、それぞれの自然観から作品作りについて語っていただく。第3弾は、アーティストの山田愛子。虫に食われた葉っぱ、小さな小さな花びら、たんぽぽの綿毛......。ふっと吹けば飛んでいってしまいそうな、小さくて繊細な生き物たちの姿をそっとすくいとり、丁寧に丁寧に縫ったり編んだり貼り合わせたりして、その美しいかたちや色を私たちの前に提示してくれる。そして、花や植物が一番美しい瞬間は、予め定められているのではなく、その人が美しいと感じた時なんだと気づかせてくれる。自然の美しさの発見は、庭にあった。
まずは、今回のカウブックス南青山のリトルプレスフェアで展示をされた3種類の本をご紹介させてください。このタンポポの本は見た瞬間息を飲んでしまいました。開かれたページの上にタンポポの綿毛が舞い降りてきて、すっくとそこに立っている。本当に美しいです。

『Dandelion』
本っていうものは、閉じるものでしょう。「永遠に眠らない本」っていう言葉が浮かんでいたんです。作品と同時に言葉が生まれてきたんです。閉じれない本、眠らない本があってもいいかなと思いまして。
タンポポの綿毛は常日頃集めていて、大事に瓶に詰めて飾ったり他のオブジェに使ったりしているの。これは今年の春に拾ったもの。毎年、毎年、貯めては捨て貯めては捨て、としていたんです。庭で採集したら、卵のパッケージに一部屋ずつ入れたり、瓶に入れたりして保管しておくんです。タンポポの綿毛の姿って、なんだか神様っぽいでしょう。ああいう造形は人間には作れないよね。
タンポポを見ていたら、ふとしたときに「眠らない本」という言葉が出てきて。そうしたら早いです。本の上に植えたいと、ささっと作品は出来てきました。
『COTOCOTO』
『COTOCOTO』も素敵です。ジャバラの和紙の上で葉っぱや花びら、糸や布が連なる。そこにはメッセージが添えられていて「木の葉や花びらが やがては土に還ってゆく前に ほんの少しばかりの身繕いをして もうしばらくの旅をさせたいと思う」とありますが、紙の上で本当に花びらが旅をしています。本の上にどうやって植物を配置していくかは感覚的に選び取っているのでしょうか?
そうね。植物が教えてくれるんです。花びらや種を拾って、押し花にして貯めているんですが、そういう植物を見ていると、頭の中でシナプスがつながるというか。こうなりたい、ああなりたいって(笑)。だからあんまり考えなくてもかたちは出来てくるような気がします。
『さくら』
『さくら』はまず色の美しさに目が奪われます。桜の木の下で本を開いて待っていて、ひらひらと花びらが舞い降りてきて、在るべき位置に収まる。その一瞬の時間でぱたんと本を閉じたような。過ぎゆく時間の刹那と閉じこめた時間の永遠が本の中で相まって、心が激しく揺さぶられます。
表紙は紅花で染めた和紙を使用しています。この桜色がなんともいえない美しい色。植物一つひとつが素晴らしいかたちをしているので、私はそれにすっと手を添えてあげるだけ。すべてあるがままのかたちがいちばん美しいんですよ。
普段からたくさんの花や植物に囲まれて毎日過ごされているそうですが、もともと植物やお花はお好きだったんですか?
いえ、今の家に住み始めてからかしら。働いていた時にはそんなに自然について考えることもなかったんだけど、自然とね。目がいくようになったっていうか。どれだけ眺めていても飽きない、ほんとうに魅力的な無限な素材です。咲いている時はもちろんきれいだけど、枯れた姿も美しい。虫に食われた葉っぱも、茶色くなった花も、すべて受け入れる。庭で起こっている植物の小さな営みを、舞台に上げたいというか、大事にしたいなと思って、いつも作品を作っています。
Text & Photos_Keiko Kamijo
(撮影協力/カウブックス南青山)
山田愛子
美術家。05年まで女子美術大学デザイン科で教鞭を執る。布や言葉、押し花を素材に繊細で綿密な作品を制作。著書に『たんぽぽコーヒーの時間に』ほか。独自のアイデアを織り込んだ限定数の手作りアートブックにファンが多い。
【A SELECTION OF WORK】
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