Quzmoインタビュー
gm tenで行ったライブドローイングの一部
Quzmoは下平晃道と多田玲子夫妻のお絵描きユニットだ。下平は本名で行う絵画の創作活動とは別に、"Murgraph(マーグラフ)"名義でイラストレーターとして活動をしており、多田はイラストレーターのほかに、ドラムとヴォーカルで構成される異色の二人組ガールズパンクバンド"Kiiiiiii"のメンバーとしても知られている。二人あわせて5つの名義で活動しているわけだが、混乱することなくちゃんと棲み分けができている。いや、逆にそれぞれの活動がシナジー効果を生んでお互いの領域を拡げる役割を果たしているのだ。5つのフィールドがぞれぞれ個別の記事を書けてしまうほど充実しているのだが、今回は「お互いを褒めあうのが得意なんです」と言う仲良し夫婦が創り上げた「ユルいルールと強い絆のお絵描きエコシステム=Quzmo」に的を絞って話を聞いた。二人のユニットですが、それぞれの普段の作品と比べてもあまり違和感がないですよね。というのも、画材(コピック)が同じせいか、そもそも二人の作風が近い印象を受けます。これは二人が出会ってから刺激を受け合ううちに・・・ということなんですか?
下平 いや、最初からコピックを使ってたんですよね。初めてイラストを見せ合った時に、お互いの作品を「せーの」で見せたら、声を揃えて二人が「かぶってる!」という感じで。でもまだその時は、お互いが絵を描いていることを知らなかったぐらいなんですよ。どっちもインスタレーションをやってたので。僕は架空の話を書いて彫刻を作ったりとか。
多田 そうそう。当時私は着ぐるみを使ったパフォーマンスをやってたんですよ。
下平 大学を出てから5年ぐらいはそういう活動をしてたんですよね。でもそのままでは広がらないし、これでは食べていけないということでデザインの仕事を始めたりして。そのデザインにオリジナリティを出すために、それまでも描いていた絵を加え始めたんです。
そこから絵を仕事にしようと考えたんですか?
下平 はじめの方は、結構サイケな絵を描いてたんですよ。動物の口からカラフルなものがブワーッと出てるヤツとか。それじゃあ仕事にできそうにないから、「もうちょっと洗練してるというか、イラストレーションとして機能しそうなものにできたら良いなぁ」とは考えていました。その時点ではそれがどういうものか全然わかってなかったんですけどね。そういうことを考えていたので「こういうのを描いてるんだけど」って感じで彼女に見せたら似ていた...という感じです。
多田 私もそれより前から絵を描いていたんですが、絵の仕事はたまに来る程度でしたね。でも、バンドをやりながらバンドのために絵を描いて、それをHPに載せ始めたら評判が良くて。「じゃあもっとどんどん描いちゃおうかな」と気を良くして絵を更新していたら、少しずつ仕事が増えてきたんですよね。「Kiiiiiiiの人にお願いします」という風に。
gm tenで行ったライブドローイングの一部
そこがお二人のイラストレーターとしての黎明期ですね。Quzmoで活動を始めたのはいつからなんですか?下平 僕達が結婚するきっかけでもあったんですが、二人とも友達だった牛嶋さんという鉄割(アルバトロスケット)の演出をやってる人がいて、彼から「六本木ヒルズでイベントをやるから、君たち二人でなんかやってみない?」と誘われたんです。2004年だったかな。二人で描くのはそれが初めてでした。2メートル四方ぐらいの掘建て小屋のようなところに「2日間ぐらいあるから好きに描いてよ」というオファーだったので、僕達としても「お楽しみ企画みたいな感じで、一緒に行ってちょいと描いてみるか」といった軽い気持ちだったんです。といっても、イベントのための買い物とかの準備は二人でちゃんとやったんですけどね。それで実際に描いてみたら「意外にストレスなく描ける」ということがわかって、「二人で描くのも面白いね」という感じで少しずつ始めたんです。それから二人で描く機会が少しずつ増えていきました。最初のうちは切り絵をやったり、映像を壁に投影してそこに描いたりといった凝ったこともしてたんですが、何度かやっているうちに「意外と普通にやったほうがみんな喜んでもらえるんだなぁ」と感じて、現場に行って動物とかを派手にキレイに描くようになったんだよね。
多田 最初の頃は「テーマがあったり頓智が効いてないとダメかなぁ」と思って、文字を書いたりその文字をつなげるとストーリーになるというようなライブペインティングをやってました。でも今はお絵かきユニットに相応しいぐらい、好きなようにお絵かきしています。
先日のウォーターマンのライブペインティングもそんな感じでしたね。
多田 あれは下平君に来た話なんだけど、彼に「一緒にやって」って言われて二人でやったんですよ。
なるほど!そういう時に便利なユニットなんだ!
下平 そうそう。二人だと一人で全部仕上げなくて良いから、途中で放っておくんですよ。今は描きたくないところとか。そしたら彼女が描いてくれるんで。
多田 私の方が具体的なものを描くのが好きで、下平君の方が「にじみ」とか「色み」とか「雰囲気」とかを描くのが得意なんで、バランスがいいんですよね。以前は、私が色を塗るのが面倒だったので、きっと彼もそうだと思って「下平君に塗る作業なんかやらせちゃいけない。私が塗らなきゃ!」と頑張っていたんですが、実際はそうでもなかったみたい。
下平 僕はQuzmoの時は塗ってるだけですね。塗り絵担当みたいなポジションになっちゃってます。
ギャラリー東京バンブーでの個展で、滝本晃司さんの演奏と一緒にライブドローイング
イベントだけじゃなくて、Quzmoとして仕事を受けることもありますよね?その時も同じような役割分担なんですか?下平 場合によるんですけど、例えばこないだの『午後の紅茶』の時は、彼女が線画を描いて僕が着色してましたね。
多田 何を描くかを考えるのは私の担当なんですけど、私が線画を描いて「はいっ」って彼に渡すんですよ。そしたら彼が完成までやってくれるんです。「あ~楽ちん」みたいな。
役割分担があるといいですね。共同作業も効率的になるし、お互いに尊重しあえるようにもなるし。
下平 最近絵本の企画とかもやってるんですが、そこでもちょっとした役割があって。彼女がストーリーとキャラを担当しています。
多田 彼は描くのが好きで、私は何を描くかを考えるのが好き。そういう感じかな。
じゃあ多田さんが動かないと始まらない、ってことですね。
下平&多田 それはありますね(笑)
お話を聞いていると、Quzmoの方が個別の活動より楽しそうに見えますね(笑)
多田 だんだんと楽しくなってきました。
下平 Quzmoで(イベントだけではなく)仕事のオファーが来るようになったから余計に楽しいのかもしれません。
無印良品「じぶんでつくる紙管こどもイス クリエーター50人からの贈りもの展」に出品した作品
クライアントサイドからすると、個人に頼むより二人のユニットのほうがオーダーしやすいかもしれませんね。下平 それはありますね。それがすごく嬉しいです。Quzmoの活動をしてると、それぞれが知り合いになったクライアントから「今度はQuzmoで」と言われたりするんですよ。
FRAPBOISとのコラボレーションTシャツ
その時の「Quzmoで」というオファーでは、どんなものを求めているんでしょうね。下平 僕だけだと、女性っぽいものとか神秘的な雰囲気な仕事が多くなってしまうんです。占いとかね。絵が子供っぽくないし。Quzmoでやると子どもっぽいものとか、ガチャガチャっとした楽しいテイストの仕事を依頼されることが多いですね。
多田 私の場合は、最近特に線画のような単色系の仕事が多くて、あんまり派手じゃないんですよね。4年ぐらいまではピンクをどーんと入れたりしてたんですけど。Quzmoはその反動なのかもしれません。
小さなお子さんと揃って三人だと、頼む方にもストーリーが出来ますもんね。企画書映えするというか、上司を説得しやすいというか(笑)。この調子で行くとQuzmoに仕事がいっぱい来そうですね。
多田 がんばりまーす!
青山ブックセンター本店で行われた、戌井昭人&多田玲子トークショー
これからが楽しみですね。お二人はそれぞれの名義でも精力的に活動をされていますが、これからQuzmoでやっていきたいことはありますか?多田 そうですね。昨日荒井良二さんと名久井直子さんのトークショーに行って来たんですが、荒井さんが日本中いろんな所にトークやライブペインティングをしに行ってるんですよ。イラストレーターだとなかなか呼ばれていくことがないじゃないですか。だから、「あー、ライブペインティング」で行けばいいのかと。
下平 あとはワークショップですね。
多田 トーク、ライブペインティング、ワークショップをやっていろんな所に旅行したい!
下平 そう。息子も入れて「家族ユニットです!」ということでね。
Text_Kenji Mori (BUILDING)
Quzmo(クズモ)
下平晃道(Murgraph)と多田玲子(Kiiiiiii)の夫婦によるお絵描きユニット。
お楽しみライブペインティグや、テキスタイル制作等で活躍中。
http://quzmo.me/
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