フィジカルかつポップなスズキユウリの発明品
デザイナー/DJ、プロダクトデザイナー、サウンドアーティスト......。現在、ロンドンとストックホルムを拠点に活動するスズキユウリは、その都度いろんな呼び方をされている。日本で明和電機に所属した後に、ロンドンのRCAでプロダクトデザインを修め、現在はストックホルムのデザインカンパニーで働きながら、アーティストとして自身の作品づくりをしている。
「彼のウェブサイトを見ると、Physical, Sound Art and Designとある。サウンドアートとデザインはわかるが、Physical(物理的な)というのを肩書きにしているのも珍しい。だが、いくつかの作品を見ればその理由が分かるだろう。
スズキユウリの作品は、現在は3つのカテゴリに分けられる。「Transparent Box」「Re-Designing Soundscape」「Physical Value of Sound」である。各カテゴリに沿って作品を紹介していきたい。
Transparent Box
Transparent Boxというのは、ブラックボックスの逆という意味で、物理現象の成り立ちや、仕組み、因果関係をクリアに伝える作品群だ。2009年にアムステルダムのPlatform 21で行なわれたプロジェクト「Breakfast Machine」が新しい。
Breakfast Machine 2009 from Yuri Suzuki on Vimeo.
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でドクが朝ご飯を作る、『ウォレスとグルミット』でウォレスが朝ご飯を作る、あれ(自動朝食調理機)、である。これは、スズキユウリと木村匡孝が協働で手がけたもの。幅13メートルの大掛かりな仕掛けで、卵が1個1個運ばれていって鉄板に落下し目玉焼きに。パンはスライスされ、ゆるゆると運ばれてトーストに。ジャムとバターまで塗ってくれる。オレンジを1個転がすと絞ってジュースになり、コーヒーは豆から淹れてくれる。すべてオートマチックだ。なんとまあバカばかしい大掛かりなおもちゃなんだろう(最大の褒め言葉)!
Re-Designing Soundscape
これは、日常私たちが聞きなれている何でもない「音」を再度考え直してデザインし直そうというプロジェクトだ。今回スズキが紹介してくれたのは「Re Design Sound Scape "Designing Door Bell"」というワークショップでの作品。
Door Bell #1 from Yuri Suzuki on Vimeo.
Door Bell #2 from Yuri Suzuki on Vimeo.
この時、参加者にはドアベルの音を作る簡単なキットが配られ、まずはチームで「人が来た時にどんな音が必要なのか?」というドアベルについてのブレーンストーミングをする。そして、電磁石やモータを使ってドアベルの音を作るというもの。これは、日常聞きなれているはずの「音」の役割を再度考え直し、自分たちの手で音を鳴らす仕組みを作ることで「音」への理解を深める。そして、でき上がってきたものを見ると、どこか笑える。一生懸命動いている姿に愛着を感じてしまうのは、私だけではないだろう。
Physical Value of Sound
これは言葉の通りなのだが、音の仕組みを力学化する作品で、下の「Sound Chaser」はアルスエレクトロニカにも出品したもので、スズキの作品で一番よく知られているものがこちらの作品ではないだろうか。
Sound Chaser from Yuri Suzuki on Vimeo.
「音楽とか音に関するデザインプロジェクトを昔からずっとやっています。レコードとか写真でも映画でも音楽でもそうですが、今は保存しているメディアがハードディスクとか目に見えないものになっていますよね。実体がないものに記録しているような気がするし、永久的に使えるものじゃないと思っています。それと、レコードって16歳以下だと見た事もない人が多い。そういう人たちが最初にレコードに触れるきっかけを作りたいと思って、こういう作品を作り始めました」(スズキユウリ)
細かくカットされたレコードの上を走っているのは、電車型のレコードプレイヤー。タイヤの横に針がありスピーカが内蔵され、レコードの溝の上を走ると音が鳴るというもの。レールの組み方でもちろん鳴る音は変わるのでコースは無限大にできる。いまはコレクターとDJの愛玩物と化したレコードが電車のレールとして蘇った! という価値の転換とも言えるし、レコードをまったく知らない世代にとっては、無限の広がりを持つ仕組みのおもちゃとも言える。
どの作品もそうだが、スズキの問題意識は常に「音や音楽」と「物理法則」にある。そんな、目に見えない「音」や「物が動く仕組み」を、楽しい体験として鑑賞者に伝えてくれる。コンセプトも小難しいことは一切言わず、シンプルかつ明快、そしてデザインはポップ、そこがいい。すごくいい。また、彼の作品を見ていると、機械が妙に愛嬌のある人間っぽく見えるから不思議。スズキユウリの作品は現在、ソウルのナムジュンパイクアートセンターで、7月3日まで見ることができる。今後どんな発明品で私たちを驚き、呆れ、笑わせてくれるのか、心待ちにしたいアーティストの一人である。
Text_Keiko Kamijo
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スズキユウリ
1980年生まれ、東京都出身。明和電機のアシスタントワークを経て、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)のデザイン・プロダクト学科を卒業。ダレル・ビショップに指事の下、音と音楽が人に与える影響をデザインを探る。現在、ロンドン、ストックホルムを拠点に活動を行っている。同時に電子音楽に傾倒し数枚のレコードを発表している、2枚の7インチレコードがロンドン、ストックホルムのレーベルより発売予定。

















